
東洋製罐グループホールディングスが、辻󠄀調理師専門学校と日本ジビエ振興協会と共同で、レトルトでジビエの可能性を引き出す「+GIBIERプロジェクト(プラスジビエプロジェクト)」を始動。12月1日(月)より、約3年間の研究開発を経て誕生した「長野のジビエ三種缶」を、クラウドファンディングサイト・Makuakeにて販売開始した。
野生鳥獣による農作物被害は日本における重要課題

近年、野生鳥獣による農作物被害は日本における重要課題の1つとなっており、農林水産省のデータ(※1)によると、令和5年度の野生鳥獣による全国の農作物被害や被害面積、被害量は増加傾向に。
こうした被害の増加を背景に、野生鳥獣の捕獲量も年々増加傾向にあり、その要因は、被害防止のための補助金、自動捕獲装置等によるスマート捕獲普及事業、自治体主導の対策強化や「鳥獣被害対策優良活動表彰」など、公的な対応や報道での注目が高まっていることが挙げられる。
一方で、捕獲後の利活用については年々増えてはいるものの、未だに約9割が廃棄処分されているのが実態だ。
ジビエの新しい価値を提供
こうした状況を受け、東洋製罐グループホールディングスは、2021年に辻󠄀調理師専門学校と共同で発足した、食を通じた社会課題解決を目指す「+Recipeプロジェクト(※2)」における第2弾の取り組みを実施。レトルト技術でジビエの利活用を推進すべく、日本ジビエ振興協会と共に「+GIBIERプロジェクト」を立ち上げ、ジビエの新しい価値を提供できる社会システムを作り上げることを目標に活動を開始した。
ジビエの利活用の課題
しかし、ジビエの利活用には、大きく3つ課題が存在するとのこと。
1つ目が「安全性」だ。野生鳥獣は、菌やウイルス、寄生虫などさまざまな病原体を保有している可能性があるため、衛生面の整った認証施設において正しく処理し、調理の際も適切に加熱する必要がある。
2つ目の課題は「流通と保管」。もともと食肉用ではなく、農作物の鳥獣被害対策として捕獲されるため、安定的な需給計画を立てることが難しいという問題があるそう。個体差も大きい上、保管には冷凍設備も必要とされるため、レストラン等でメニューとして加えることが困難なことが、ジビエ利用のハードルとなっている。
3つ目の課題は「手間」。安全性や衛生面から、適切な処理や加熱によってしっかりと殺菌を行う必要性があるため、ジビエ調理には専門的な知見を有することが推奨されており、スネ肉や首肉などの部位は、肉を柔らかくするために長時間煮込む必要があるなど、提供側の労力がかかることも利活用の妨げになっているという。
レトルト技術を応用したジビエ缶詰

今回販売が始まった、「Confit de chevreuil~柑橘香る鹿肉と大豆のコンフィ~」「CERVO ALLA CACCIATORA~鹿肉とトマトの猟師風煮込み~」「鹿肉の清酒煮~出汁と鹿肉の風味を活かした肴~」がセットになった「長野のジビエ三種缶」は、レトルト技術を応用した商品。

加圧加熱殺菌を用いたレトルト技術を応用することで、菌やウイルスを死滅させてジビエを安全に食べられるようにするだけでなく、食材を常温で長期保存可能にしてる。
これは、捕獲のタイミングが不安定なジビエ肉の需給を安定させることにも寄与。加熱済みのため開封してすぐに食べられるほか、調理の際は最後に焼き目を入れる、混ぜるといった仕上げだけで、調理が完了させることができる。
調理の技術も包装容器の技術も、食べ物をより安全においしく食べられるように発展してきた技術。昨今の鳥獣被害の先にある、ジビエの利活用は、捨てられているから食べようという日本の“モッタイナイ精神”にとどまらず、高タンパク低カロリーな食料資源として栄養の観点からも重要だ。
今後は、製品開発にとどまらず、ジビエの安全性や流通、手間といった課題の解決に向けて、レトルト技術を活かした新たな仕組みを構築すべく、東洋製罐グループホールディングス、辻󠄀調理師専門学校、日本ジビエ振興協会は三者での共創を進めていくとしている。
レトルトでジビエの可能性を引き出す「+GIBIERプロジェクト」から誕生した、ジビエ缶詰をチェックしてみては。
Makuake:https://www.makuake.com/
プロジェクト名:一流が辿り着いた究極のジビエ調理法【長野のジビエ三種缶】
※1 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和5年度)」:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html
※2 プロジェクト第1弾は“長期保存できる本格料理”(2024年9月24日付プレスリリース):https://www.tskg-hd.com/news/detail/20240924_newsrelease.html
(佐藤ゆり)